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気高き敗者へ――高校生ラガーに教えられた人生の矜持

人生において、挫折する時も敗北を味わう時もあります。その時にどんな振る舞いをすれば良いのか。それを68歳の私は、18歳の青年に教えられました 。

舞台は高校ラグビーの聖地、花園でした 。冬の空気が張り詰める1月5日の準決勝。大阪桐蔭と桐蔭学園による「桐蔭対決」は、今回も見る者の心を激しく揺さぶる展開となりました 。試合は終盤までもつれ込み、大阪桐蔭が4点のリードを守り切れるかという局面を迎えます 。しかし、桐蔭学園の攻撃は止まりませんでした 。その回数は実に21回に及びました 。息が詰まり、脚が動かなくなるほどの猛攻 。かつて2018年に、大阪桐蔭が64回もの攻撃を守り切って優勝した記憶がよぎる中、歴史は同じ結末を用意しませんでした 。試合終了間際、逆転のトライ 。ノーサイドの笛が、無情に鳴り響きました 。

~白が大阪桐蔭 青が桐蔭学園です。逆転勝ちした桐蔭学園にも大きな涙~

https://youtu.be/mhXA1LedKvw?si=YjVrD6JWC2ODzJn3 (5分9秒の動画)

歓喜と絶望が交錯するグラウンドの中心で、私は1人の青年の動きを目で追っていました。大阪桐蔭の主将、手崎颯志選手です 。試合中、彼は誰よりも体を張り続けていました 。最前線で相手の突進を受け止め、倒され、即座に起き上がり、声を出す 。その繰り返しでした 。主将として、逃げ場のない場所に立ち続ける覚悟が、そのプレーの一つ一つに深く刻まれていました 。

そして敗北が決まった、その瞬間です 。多くの選手が膝をつき、顔を覆いました。高校生にとって、あまりに過酷な現実です 。けれども手崎主将は違いました 。彼は泣き崩れる仲間を起こし、真っ先に整列の場所へと向かったのです 。  勝った相手に敬意を払い、レフェリーに深く頭を下げ、そして応援席へと向き直る 。寒さの中、声を枯らしてくれた人々へ、感謝の言葉を伝える 。その所作はどこまでも整然としていて、迷いがありませんでした 。そこには単なる「負けた人間」の姿ではなく、最後までチームを導く「責任を果たす人間」の姿がありました 。

すべての儀式が終わった後、グラウンドの隅で、彼は初めて大声で泣きました 。誰の視線も気にせず、感情を押し殺すこともなく、ただ悔しさを吐き出すように 。  私はその姿を見て、激しく胸を打たれました 。人生で何度も挫折を経験してきたはずの私が、18歳の青年から大切なことを教えられていました 。