小島俊一公式サイト

街に本屋は必要なのか?

 BS―TBS「関口宏のこの先どうなる⁉」で「街の本屋」をテーマに取り上げていただきました。https://bs.tbs.co.jp/konosaki/archives/086/ (放送は2026年2月22日正午からでした)

街の本屋は、思い出の装置です。子どものころ買ってもらった一冊。目的もなく立ち寄り、偶然出会った本。そこには検索ではたどり着けない「出会い」がありました。
 しかし今、街の本屋が静かに姿を消し続けています。1日1軒のペースで減り、全国の市町村の4分の1以上が無書店という現実があります。よく言われる理由は「活字離れ」や「ネット書店の台頭」です。しかし番組で伝えたのは、これが本当の原因ではないということです。  経済産業省のリポートで日韓米英独仏の6カ国でこんなにも本屋が減っているのは、日本だけだと分かりました。

本屋は、薄利多売のビジネスモデルで成り立ってきました。その「多売」を支えていたのが雑誌でしたが、その雑誌の売上がこの30年で7割も減りました。多売の柱が抜け落ちたのに、薄利の構造だけ残った。これが、街の本屋が直面している現実です。諸外国の本屋は書籍販売が中心です。

日本の本屋は、販売価格も仕入れ価格も自分で決められません。返品できるけれど、そのため利幅が薄い。書籍の注文にはとても時間がかかります。いずれも本来は本屋間の競争をなくすための制度でした。 しかし、時代が変わっても見直されないままで、現場の自由度を奪っています。 

 興味深いのは海外との違いです。フランスやドイツは、価格を守りながら利便性や流通を進化させてきました。日本は、価格は同じなのに不便なまま。消費者がネット書店を選ぶのは自然な流れでもあります。

それでも希望はあります。番組で元気な街の本屋を紹介しました。「本を売る」ことだけに固執していない本屋は本を通じた体験や出会いを売っています。作家と読者が直接つながる場をつくり、地域の信頼を活かし「この本屋だから行きたい」と思わせる場所を育てています。  本屋の未来は、制度を見直して現場の挑戦が後押しされれば、楽観シナリオも描けます。一方で、何も変わらなければ、街から本屋が消え、大型店とネット店だけが残るようなります。これは「市場の必然」でなく「選択の結果」なのです。

街の本屋は、偶然と好奇心が交差し、人が少しだけ賢く、少しだけ自由になれる場所です。その灯(あか)りを残すかどうかは、業界だけでなく、私たち一人ひとりの意思にもかかっています。  仕事帰りに、散歩の途中に、街の本屋に、ふらっと立ち寄ってみませんか。そこにはきっと、ネット書店では用意できない本が静かに待っています。