小島俊一公式サイト

monthlyLetter
No.002

不完全を受け容れる勇気

私は仕事柄、多くの方から相談を受けます。

若い看護師の方からは
「経験不足の私は患者様に満足して頂ける看護ができているでしょうか」と。

あるビジネスパーソンからは
「上司とうまくコミュニケーションが取れず、仕事の成績が上がらない」と。

主婦の方からは
「子育てに自信がありません。どうしたら良いですか」と。

分野や立場は違っても、悩みには共通点があります。
それは「理想のあるべき姿」と「現実の自分」とのギャップに苦しんでいること。
そして、過去の後悔にとらわれていることです。

私はそんな方に「勇気を持ちましょう」と伝えます。
ここで言う勇気とは、アドラー心理学の「不完全であることを受け入れる勇気」です。

完璧を求めすぎるあまり、自分に点数をつけ続けていませんか。
100点を目指すことをやめてみると、心に余裕が生まれます。

過去を悔やむ人には未来が見えません。
未来にワクワクしている人は過去に縛られません。
未来を見つめたとき、今この瞬間が輝き始めるのです。

考えてみれば、ベテラン看護師でも常に満足のいく看護ができているわけではありません。上司だって悩みを抱えています。カリスマママや姑、小姑でさえ、完璧な子育てなど到底できません。

人は誰しも不完全です。その前提を受け入れたとき、他人へのまなざしも優しくなり、関係性が変わります。

実際、部下の失敗に対して「完璧を求めない姿勢」で接すると、相手は安心し、挑戦しやすくなります。組織もまた、失敗を許容できる雰囲気があるからこそ成長します。

発明王エジソンはこう言いました。「完全に満足しきった人がいたら、それは落伍者である」

満足しきることが停滞を意味するなら、不完全さは挑戦の証です。大切なのは、いまの自分をそのまま受け入れながら、未来に向けて歩むこと。

不完全を認めることは、自分を甘やかすことではありません。現実の自分を起点に、前へ進む力を取り戻すことなのです。

完璧でなくてもいい。いや、完璧でないからこそ面白いのです。

次に悩んだときは、こう問いかけてみてください。Do you love you?――自分を愛せていますか?

不完全なままの自分を受け入れたとき、仕事も人生も軽やかに動き出します。